カシミヤ毛布は中国、モンゴル人民共和国、キルギス、イラン、イラク等の中央アジア諸国の寒冷地で飼育されるカシミヤ山羊から採取されたウブ毛の部分のみを原料として使用しています。
気候的にみますと、カシミヤは年間の温度差が大きい地域ほど良質の原毛が産出されます。特に、中国の内モンゴル自治区、新彊、青海省では夏季の日中は摂氏30~40度になり、冬季には零下15~30度と夏冬の温度差が約60度となるので繊度(各繊維の太さ)が極めて細く、繊維長が長い良質の原毛が採取されます。
カシミヤの原毛は3~4月頃、自然に脱毛してしまう前にウブ毛を採取いたします。採毛は羊のようにバリカンで刈り取るのではなく、金属製の熊手のような採毛器を使ってウブ毛のみを梳きとります。
1頭の大きい山羊からは約200~300g、小さい山羊からは約150~200gしか採取出来ず、それを洗毛機で洗毛し整毛機でウブ毛以外の毛やフケ等を除去いたしますと、カシミヤ毛布の原料として使用できるのは採取された原毛の約半分位となります。従いまして、極めて生産性が低い故、羊毛や他の繊維原料に比べて高価となる所以です。
カシミヤ大国の中国では、近年内陸部の砂漠化が問題化し、それに伴って政府の施策によるカシミヤ山羊の頭数削減により、カシミヤの産毛量も毎年減少が続き、現在では年間産毛量が6000~8000トンといわれています。
① 内蒙古自治区
内蒙古自治区は中国華北部で、東西2000キロに及ぶ中国最大の自治区で、主に蒙古族が居住しており、その殆どが荒涼とした草原と砂漠で、冬は極寒、夏は猛暑の地で、年間の降雨量が100ミリ程度で、草木の生育もままならず、大変厳しい自然環境といえます。
そのような、非常に厳しい環境で飼育されているカシミヤ山羊は、その環境に順応する為に、14~15μという非常に細い繊度とヌメリ感、
上品な光沢をもっており、中国各地のカシミヤ産地の中でも特に貴重品扱いされています。
内蒙古で飼育されているカシミヤの80%以上がホワイトで20%弱がブラウンかライトグレーです。
② 西蔵・新彊地区
平均海抜5000mのチベット高原では、世界一逞しいカシミヤ山羊が飼育されています。
チベット産カシミヤ山羊の特徴は、その厳しい環境で飼育されているため繊度は14~15μと極めて細く、ヌメリ感、光沢も優れており、高寒冷地域のため、5~7月に採毛されます。
採毛量は約700トンですが、整毛した状態では約300トンとなり、中国産カシミヤの約7%位になります。
チベット産カシミヤは約60%がブラウンで約40%がライトグレーその他です。
③ 山東省地区
山東省の中央に聳える霊峰泰山の名を付して泰山カシミヤとも呼ばれており。森林や渓流、草原等豊かな自然に恵まれ、そこで放牧されたカシミヤ山羊は産毛の細さと上品で高貴な風合いから「泰山カシミヤ」として特別に取り扱われ、歴代皇帝が好んで愛用したことから「皇帝カシミヤ」とも呼ばれてきました。
他種と交配改良せずに小型山羊の特性を守り続けており、繊度は極めて細く、羽毛の様な軽さと柔らかなヌメリ感をもっている。又、原毛の色相がカシミヤでは珍しく、ホワイト、ブラウン、ライトブラウン、ライトベージュ等バリエーションが豊富です。
山東カシミヤは採毛が他の産地に比べて3ケ月早く、産毛量は整毛後で年間40トンと大変少なく中国全体の約1~1.5%しか採れません。
カシミヤ山羊の飼育地の標高が低い為、鮮度が17~19μと太いが、クリンプ(繊維表面のうろこ状)が多く、強度も高いので嵩高な製品にむいている。カラーバリエーションが多い。
年間産毛量は(原毛で)約1500トンである。
ロシア南部に広がる比較的豊かな国土で飼育しており、牧草が豊富にあるので繊度が18~20μと太く、クリンプも多いので嵩高な製品に使用されている。光沢やヌメリ感は劣る。濃色系が多い。
年間産毛量は(原毛で)約1000トンである。
Q. | ① カシミヤってどんな動物ですか? |
A. | カシミヤは山羊の一種で羊ではありません。インド北西部のカシミール地方に生息するカシミヤ山羊に由来します。チベット等の高地や、ゴビ砂漠等の比較的気象条件の厳しい所で飼育しているので、表面の粗毛の下に非常に良質の繊度の細かい毛で覆われています。 |
Q. | ② カシミヤはどこで採れるのですか? |
A. | カシミヤは中国人民共和国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区、チベット、ゴビ砂漠、モンゴル人民共和国、イラン、アフガニスタン、キルギス等の中近東諸国、ロシア等で飼育されています。 |
Q. | ③ 希少性とはどうしてですか? |
A. | 気象条件が非常に厳しく、飼育するための食料となる草木が少ない所で飼育している為、無制限に飼育頭数を増やす事が出来ず、その産毛量も一頭当たり約150~250グラムと大変少なく、とくに衣料、毛布等には粗毛の部分を除去した下毛のみを使用いたしますので、大変貴重なものとなります。 |
Q. | ④ どうして柔らかいのですか? |
A. | 衣料、毛布等の原料としては、下毛の部分約13ミクロンから19ミクロンのものを使用しており、柔らかい手触りは勿論ですが、細かい繊維が密集しているので空気を多く含み、保温力も高まります。 |
Q. | ⑤ 価格の差が大きいのはどうしてですか? |
A. | カシミヤの原毛の価値は繊度(それぞれ一本ずつの繊維の太さ――― 細かい程上質)繊維長(それぞれ一本ずつの繊維の長さ――― 一定の長さが必要)夾雑物(草の葉や実――― 少ない方が上質)によって決まります。 繊度が細く、繊維長が揃い、夾雑物の少ないものが価格が高くなります。 |
Q. | ⑥ 蒸れませんか? |
A. | 合成繊維と異なり、繊維自体が呼吸をしているので蒸れません。 |
Q. | ⑦ パチパチと静電気はおこりませんか? |
A. | 非常に乾燥した状態で使用すると、多少の静電気はおこりますが、シルク毛布みたいなことはありません。 |
Q. | ⑧ ブラウン以外の色はどうして少ないのですか? |
A. | カシミヤ山羊には、ホワイト、ブラウン、ライトブラウン、キャメル、ホーン等飼育地等によって色々の色のカシミヤが飼育され、勿論ブチ(一頭で色の混ざったもの)の山羊もあります。そのため、その時その時の原毛の色、ブレンドの仕方によって当然微妙に色合いが変ってきます。 現在、一番産毛量の多いのはホワイトですが、ホワイトは色んな色に染める事が出来るので一番価値も高く、主に衣料に使用されております。毛布に使用されるのはブラウン、ライトブラウン、キャメル色等が中心で、ブラウン、ライトブラウンは主に中国、モンゴルで主に飼育され、キャメル、ホーン等の色合いのカシミヤは主に中近東で飼育されております。 |
Q. | ⑨ 手触りの違いの差はどうしてですか? |
A. | 毛布に使用されているカシミヤの繊度は超高級品の約13ミクロンから低ランクの約19ミクロンぐらいまで品質にかなりの差があり、自ずと手触りも異なってきます。 |
Q. | ⑩ 洗えますか? |
A. | 防縮加工をしたカシミヤ毛布であれば水洗い可能ですが、一般の商品は信頼できるクリーニング屋にだして品質表示通りのドライクリーニングをおすすめします。タンブラー乾燥は絶対おさけ下さい。 |
Q. | ⑪ 汚れやすいですか? |
A. | カシミヤが全て汚れやすいと云う事はありません。 |
Q. | ⑫ 普段の手入れはどうすればよいですか? |
A. | 着用シーズン中、時々お天気の良い日に1~2時間陽に当てて頂き、湿気を放出しホコリをたたき、ブラッシングをしていただければOKです。 |
Q. | ⑬ 虫はつきませんか? |
A. | 日陰でよく乾かし、ホコリを叩き出したあと、湿気の少ない所で箱等に入れて保管し、出来れば無臭の防虫剤を入れて下さい。 |
Q. | ⑭ 何年ぐらいつかえますか? |
A. | 一概に何年ということは難しいですが、前述のようにお手入れを充分されれば、10年以上お使いになれます。 |
Q. | ⑮ 毛玉ができますか? |
A. | カシミヤは繊度が細かいので、どうしても毛玉が出来易いですが、繊維が揃っているため、その毛玉は毛布全体に規則ただしくできますので、いわゆる、汚らしい毛玉の イメージとは異なります。 |
Q. | ⑯ ホコリはでませんか? |
A. | 上質の繊度、繊維長の揃っているものは殆んどホコリはでませんが、起毛等加工による遊び毛がのこっていることもありますので、使用当初、多少のホコリがでるかもしれません。 |
Q. | ⑰ 硬くなりますか?重くないですか? |
A. | 洗濯時に気をつければ大丈夫です。各自のお好みで目付けは色々あります。 |