キャメル(ラクダ)には二種類あり、中国北西部(内蒙古)、モンゴル、チベット、中近東にわたる中央アジアの砂漠地帯で飼育する双峰種(フタコブラクダ)とアラビアからアフリカにかけて生息する単峰種(ヒトコブラクダ)があります。繊維原料として使用しているのは双峰種(フタアコブラクダ)の毛です。
産毛量は、年間中国で約100万kg、モンゴルで150万kg、その他50万kg合計300万kgと羊毛の産毛量の0.1%に過ぎず、カシミヤと比べても約1/5に過ぎません。
キャメルの毛は年に1回晩春に抜け変わるので、この時期に表面を覆う長く粗い毛の内側の細くて柔らかなウブ毛を櫛型の採毛器で梳き取ります。
この土毛(原毛)は油脂分や土砂を洗い落とし、整毛機に掛けて30~100μの粗毛(荒毛)を取り除き、紡績用の原料となる16~21μの整毛(綿毛)となります。原毛から整毛の終わった段階での歩留まりは50~30%です。整毛は、繊度、繊維長、色、刺毛の多少に依って格付けされ、特に繊度の細いものは少量しか採れないので高値で取引されます。
内蒙古自治区の阿拉善(アラシャン)、新彊ウイグル自治区のアルタイ地方は夏季は摂氏40度、冬季は-30度と寒暖の差が激しく、降雨量が少なく、半砂漠のような非常に厳しい環境で飼育されている為に、その繊度は16.5~18μとキャメルしては極めて細く、柔らかく、色合いも淡くてベージュ色に近く、カシミヤにも匹敵する上品な風合いを醸し出しています。その中でも20頭に1頭位がクリーム色のキャメルがおり、その年間採毛量が4~5トンで「ホワイトキャメル」と称して貴重品扱いをされてきました。
一般にいわゆる「ベビーキャメル」と称されるものは、単に繊度の細いものの代名詞的に称されている場合があり、整毛取引上でのはっきりとした概念やグレードは区別されておりません。公的検査機関でもその区別基準や鑑定方法はありません。